読書
明日には図書館に返さなければならないので、水谷彰良著『サリエーリ - モーツァルトに消された宮廷楽長』(音楽之友社, 2004)についてメモを残しておく。下記は2019年の復刊版へのリンク。 www.fukkan.com 本文を始める前に、弊ブログにいただいた下記コメ…
最初に読み終えたミステリについて少しだけ書いておく。 アガサ・クリスティのポワロものの31番目の長篇『ハロウィーン・パーティ』を、昨年新訳版が出たハヤカワ・クリスティー文庫で読んだ。旧版は中村能三(1903-1981)訳だったが、山本やよい氏(1947-)…
久しぶりにアガサ・クリスティのミステリを取り上げる。 現在の私は作曲家・モーツァルトの生涯とその音楽を追うことに熱中しているが、3年前から熱中していたのがアガサ・クリスティの全ミステリ(アドバンチャーものを含む)を読むことで、昨年末の時点で…
この週末は大江健三郎と吉田秀和を再発見というか、大江に関しては新発見した。このことによって、一昨日と昨日の土日は、いつまで続く(続けられる)かは全くわからない今後の人生において大きな転換点になるかもしれないと思った。 まず大江健三郎について…
トマ・ピケティの『資本とイデオロギー』(原書2019, 邦訳みすず書房2023=山形浩生・森本正史訳)は、邦訳が出たばかりの8月下旬に買ったけれどもまだ1ページも読んでいない。まとまった時間がとれないからだが、この本を読みながら連載記事を断続的に公開…
10月はここまでずっと仕事に忙殺された。少なくとも来年1月前半までは仕事に追われそうだ。しかもその3冊のうち1冊は、9月中に大部分を読んでいて月の最初の日である10月1日の日曜日に読み終えた本だった。それがアントン・チェーホフ(1860-1904)が20代半…
初めにお断りしておきますが、この記事は表記作品のネタバレが満載ですので、当該の小説を未読の方にはおすすめしません。 8月最後の日曜日に区立図書館に行った時、今まで全巻揃っているのを一度も見かけたことがなかった宮部みゆきの『模倣犯』全5冊(新潮…
先週公開したガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』の記事に、トルストイが『アンナ・カレーニナ』の中で、後年『オペラ座の怪人』ヒロインのモデルとされたスウェーデン出身の女声オペラ歌手に言及していたことに触れたので、3回連載を予告しながら未だに締…
前回取り上げた『黄色い部屋の秘密』を書いたガストン・ルルーのもう一つの代表作『オペラ座の怪人』(1910)は昨日(9/2)、2022年に出たばかりの新潮文庫の村松潔訳で一気読みした。 www.shinchosha.co.jp 役者の村松潔は東京都江東区出身で1946年12月1日…
ミステリのネタバレは今では禁物とされているけれども昔は横行していた。私が小学生時代に子ども用にリライトされた版で読んだガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』も犯人を知らされた上で読んだから興味は半減だった。 この作品を自作のミステリ『複数の時…
私が現在住む東京都江東区出身のミステリ・歴史小説作家で私と同世代の宮部みゆきが2010年に書いた非ミステリの現代小説である『小暮写眞館』を読んだ。もとは講談社の創業100年を記念して2010年に刊行された作品とのことで、700ページを超える分厚いハード…
少し間が空いたが、7月23日に公開した下記記事の続き。 kj-books-and-music.hatenablog.com トルストイの中篇「クロイツェル・ソナタ」は、妻の不貞を疑った夫が、仕事のために外出して空けているはずの家に帰ってきて、疑っていたヴァイオリニストが妻と一…
予定を変更して東野圭吾の「腐敗した」という感想しか思い浮かばない邪悪なミステリ『レイクサイド』(文春文庫)をぶっ叩くことにした。私は『容疑者Xの献身』(文春文庫)を読んで以来東野圭吾が大嫌いだが、たまに東野を批判するためだけに東野の小説を読…
私が初めて読んだトルストイの小説は『アンナ・カレーニナ』で、もう40年前のことだった*1。これは面白かったが、次に読んだ『戦争と平和』にはへこたれた。特に、物語の流れをしばしば中断して長々と展開されるトルストイの自説の開陳に辟易し、それでもな…
今週の超多忙期に入る直前の先週、もうすぐしたらネットもできなくなるし本も読めなくなるとわかっていたら、却って読書欲が増して半藤一利の『ノモンハンの夏』(文春文庫, 2001)と船戸与一の『砂のクロニクル』(小学館文庫上下巻, 2014)を相次いで読ん…
今月は新しく読み終えた本が7冊。少し元のペースに戻したが、それでも2010年代に年間100冊をめどにしていた頃には戻っていない。 読み終えた本の中に小泉悠の『ウクライナ戦争』(ちくま新書,2022)がある。 www.chikumashobo.co.jp 今頃になってやっと読め…
昨日(5/26)読み終えた鈴木大介『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)が講談社から販売中止になり、同社のサイトに回収の告知がされていた。 bookclub.kodansha.co.jp この本の読後感を一言で書くと、正直言って甚だしく「期待外れ」の本だったが、そ…
黄金週間最後の日曜日から金曜日までかけて、チャールズ・ディケンズの『二都物語』(加賀山卓朗訳, 新潮文庫版2014)を読んだ。 www.shinchosha.co.jp 最初に大事なことを書いておくと、今回の読書では非常な幸運に恵まれた。というのは、本作の末尾に非常…
連休後半に小松左京(1931-2011)の『日本沈没』(1973)を2020年のハルキ文庫版上下巻で読んだ。初出は光文社のカッパ・ノベルス。図書館本で読んで、今日が返却日なので簡単にメモを残しておく。 この本は少年時代からいつか読もうと思いつつ長年放置して…
4月に読んだ本は5冊だけだったが、うち4冊がミステリで、しかもその中には批判する目的でしか読まない東野圭吾作品が1つ含まれている。昨年来の多忙の疲れが新年度に入ってもまだ残っている体感がある。だから打率1割4分台にまで落ちてスワローズ7連敗の戦犯…
『kojitakenの日記』に、連日立民代表の泉健太をこき下ろす記事ばかり書いてきたが、日本国総理大臣にして自民党総裁の岸田文雄も泉と同じくらい大嫌いだ。その岸田がますます嫌いになる一幕があった。岸田は年末に東京都心の八重洲ブックセンターで15冊の本…
今年後半は仕事に割かざるを得ない時間が多すぎて閉口した。9月には弊ブログの更新回数が一桁だったし、更新回数を増やした10月と11月は読んだ本がそれぞれアガサ・クリスティのミステリ1冊ずつという惨状。年末年始も来年早々の仕事のために一定の時間を割…
8月は非常に忙しくて本もまともに読めなかった。しかし2019年1月以来の43か月連続更新が途切れるのも癪なので、今月読んだたった2冊の本の書名を挙げておく。 1冊目は、昨年1月以来20か月連続で読んでいるアガサ・クリスティの『葬儀を終えて』。一昨年にハ…
本記事は、当初『kojitakenの日記』の下記記事の後半部分として書き始めていたものだ。 kojitaken.hatenablog.com 以下、今年(2022年)5月に刊行された中北浩爾『日本共産党 - 「革命」を夢見た100年』(中公新書)を参照しながら、日本共産党の民主集中制…
かつての朝日新聞のスター記者にして、1992年以降は『週刊金曜日』の創設者として知られる本多勝一が1980年代に書いた『アムンセンとスコット』(単行本初出は教育社,1986)が昨年末に朝日文庫入りした。それを買い込んで積ん読にしていたが、読み始めたら面…
連休中にチャールズ・ディケンズ(1812-70)の長篇『荒涼館』(岩波文庫2017, 全4冊=原著1852-53)を読んだ余勢を駆って、同じ著者の有名作品ながら読んだことがなかった『オリバー・ツイスト』(原著1837-39)を2020年に出た光文社古典新訳文庫で読んだ。 …
読み終えてから少し時間が経ってしまったが、休日が多かった今年の黄金週間に、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『荒涼館』全4冊(岩波文庫,2017)を読んだ。訳者は佐々木徹(1956-)で、図書館で借りて読んだ。 www.iwanami.co.jp www.iwanami.co.jp …
今年の3月はあまり暇がなかった上にちょっとしたトラブルもあった散々な月だったが、2月24日に始まったウクライナ戦争で思い出していたのは先月読み終えた大岡昇平の『レイテ戦記』だった。熱帯のフィリピン・レイテ島と冬季の北の国とで気候は真逆だけれど…
2月に読み終えた本は5タイトル7冊。多くの時間を割いたのは大岡昇平の『レイテ戦記』(中公新書, 2018改版)の第2〜4巻だった。ことに第2巻を読むのに難渋し、一度の週末では読了できずに2週間に分けた。それに続く第3巻はそれぞれ土日の2日間、第4巻は索引…
昨年(2021年)は読んだ100冊のうち42冊がアガサ・クリスティだった。今年はその比率を減らそう、というより自動的に減ることになる。というのは、ポワロもの長篇の6割(33冊中20冊)とミス・マープルもの長篇の半分(12冊中6冊)を読み終え、短篇集も半分以…