KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

2020-01-01から1年間の記事一覧

山本太郎『感染症と文明 - 共生への道』(岩波新書)を読む

今のところ、今年最後に読み終えた本は山本太郎著『感染症と文明』(岩波新書2011)だった。私が買ったのは2020年5月15日発行の第7刷だが、「アマゾンカスタマーレビュー」を見ると、4月24日(26日?)発行の第4刷が出ていたそうだ*1。つまり緊急事態宣言発…

1997年に東野圭吾『探偵ガリレオ』に描かれていた「原子力工学」の斜陽

このブログでは珍しく2日連続の更新になる。珍しく、というよりブログ開設以来初めてかもしれない。昨日は音楽の話題だったが、今日は小説の話題。 初めにお断りしておくが、このエントリには頭書のミステリのネタバレが思いっきり含まれているので、未読か…

モーツァルトの命日にレクィエムを聴きつつ、44年前の吉田秀和のラジオ番組を思い出す

何気なくiTunesを開いていたら、2004年12月5日の22時台から23時台にかけてモーツァルトのレクィエム(死者のためのミサ曲)を、アーノンクールの1981年盤で聴いていたタイムスタンプが残っていた。手持ちのCDから読み込んだものだが、iTunesで聴いたのはこの…

井上ひさし『十二人の手紙』、『四捨五入殺人事件』を読む

今年は井上ひさしの没後10年とのことで、1984年に新潮文庫から出ていた『四捨五入殺人事件』が中公文庫から改めて出版された。帯に「どんでん返しの極致」、「だまされる快感!」とあるからミステリー作品らしい。 #井上ひさし さんの #四捨五入殺人事件 #中…

太田裕美とジョン・ゾーンと近藤等則の「三者の共演」はあったか

下記記事に触発されて記事を書くことにした。 sumita-m.hatenadiary.com 上記リンクのブログ記事の初めの方に、下記太田裕美のツイートへのリンクが張られている。 トランペッターの近藤等則さんが亡くなった…ジョン・ゾーンの繋がりで一緒にお仕事を…とても…

東野圭吾『手紙』を読む〜「同調圧力」が生み出す加害者家族へのバッシングを描いた小説/平野社長の言葉に「感動」した人とは友達になれない

私が日本の「読書家」たちのあり方に大きな疑問を抱いたのは、カズオ・イシグロの『日の名残り』を読んで、この翻訳小説について書こうと思ってネット検索をかけたときだった。そのことは1年ちょっと前にこのブログに書いた。 kj-books-and-music.hatenablog…

ベートーヴェンは「改革者」ではなく、反動的な政治体制で生きることを余儀なくされた「革命家」だった

神子島慶洋氏の下記ツイートに触発されて、今月に入って一度も更新していないこのブログに記事を書こうと急に思い立った。 バッハやモーツァルトの時代は作曲家が王侯貴族に依頼されて曲を書いていたが、ベートーヴェンはその慣例を打ち破り、自ら演奏会を主…

物足りなさが残った東野圭吾『麒麟の翼』

この記事は最初『kojitakenの日記』のために書き始めたが、こちらのブログの方が適切かと思い、こちらに載せることにした。 昨日「kojitakenの日記」に公開した記事のタイトル「辞意表明の確率」から連想していたのは、一昨年春に読んだ松本清張の短編小説「…

東野圭吾『容疑者Xの献身』『白馬山荘殺人事件』を読む

このブログにも書いたことがあるかもしれないが、私は高校1年か2年生くらいの頃まではミステリーを好んで読んだもののその後読む機会が激減した。特に、1989年に『カラマーゾフの兄弟』を読んだ時、この小説を超えるミステリーなんかあり得ないんだから、な…

松本清張に登山の手ほどきをした「登山家」と消息不明の山岳小説家・加藤薫はやはり別人の可能性が濃厚/id:peleboさんのコメントより

今年の新型コロナウイルス感染症で「QOL」(Quolity of Life)が下がったと感じておられる方は少なくないだろう。私もその一人だ。 在宅勤務では仕事にアクセス制限があって(テレワークなんか全然想定していなかった職場なのだ)なかなか進まなかったが、その…

松本清張『霧の会議』(上・下、光文社文庫)を読む

図書館で借りた松本清張の『霧の会議』上・下巻(光文社文庫)*1を返却しなければいけないので軽くまとめておく。 本作は清張晩年の1984年9月11日から1986年9月20日までの2年間、読売新聞に連載された新聞小説。余談だが、連載会議後すぐに読売ジャイアンツ…

2020年6月に読んだ本:井上栄『感染症・増補版』、石井妙子『女帝 小池百合子』

6月も本を2冊しか読めなかった。緊急事態宣言発令当時に安倍政権が言っていた7〜8割削減(すぐ「8割削減」に修正された)を4月以降の読書量で達成してしまったかのようなふがいなさだ。9年前の東日本大震災と東電原発事故の時にも本が読めなくなった時期があ…

2020年5月に読んだ本:今野勉『宮沢賢治の真実 - 修羅を生きた詩人』など

月の大半が緊急事態宣言下にあった5月は、4月よりもさらに読書量が減り、読了した本は新潮文庫のノンフィクション2冊のみ。マーカス・デュ・ソートイ著、冨永星訳の『素数の音楽』(2013,原著2000)と、今野勉『宮沢賢治の真実 - 修羅を生きた詩人』(2020, 単…

2020年4月に読んだ本:武田百合子『富士日記』など

緊急事態宣言が発令された4月は、2011年5月以来の読書量の少ない月になってしまった。武田百合子(1925-1993)の『富士日記』(中公文庫の全3冊, 2019年新版)の中巻と下巻、その関連書籍である中央公論新社編『富士日記を読む』(中公文庫, 2019)、それに…

2020年3月に読んだ本

新型コロナウイルスのニュースに振り回された3月は、先週の火曜日(24日)までがやたら納期に迫られた仕事が続いてかなり疲れた。この2つの要因によって、読んだ本の数が減り、数少ない本も軽いものが多くなった。思い出せば2011年の3月は、11日以降本を読む…

2020年2月に読んだ本:宮田光雄『ボンヘッファー - 反ナチ抵抗者の生涯と思想』(岩波現代文庫)など

2月は忙しく、かつ新型コロナウイルスのニュースに気を取られることも多かったので読んだ本は7冊と少ない。 今月の1冊は、表題にした宮田光雄『ボンヘッファー - 反ナチ抵抗者の生涯と思想』(岩波現代文庫, 2019)に尽きる。1995年に刊行された岩波セミナー…

2020年1月に読んだ本:カフカ『失踪者』『城』『流刑地にて』、樋口陽一『リベラル・デモクラシーの現在』、島田雅彦『虚人の星』など

今年はどういうわけか年初から仕事がタイトで、1件の記事を書くのにいつも時間がかかるこちらのブログの記事を、年明け以来一度も更新できずにきた。3月半ば過ぎまではこの調子が続くので、1月と2月は「今月読んだ本」を羅列して、とりあえず昨年1月以来続け…