KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

松本清張

松本清張『馬を売る女』に収録された「山峡の湯村」の舞台のモデルは岐阜県の秋神温泉らしい/「潜る」を「かずく」と言う地域はどこか

光文社文庫から順調に出ていた「松本清張プレミアム・ミステリー」の刊行が、このところあまり出なくなった。それも、松前譲氏が執筆している巻末の解説文で刊行予定が予告された作品が、従来のラインアップに古い文庫本を並べている出版社との交渉がうまく…

東野圭吾『真夏の方程式』には松本清張『砂の器』との共通点もあるが、本質は『容疑者Xの献身』を焼き直した反倫理的小説

初めにお断りしておくが、本エントリもいつものようにネタバレ満載なので、(私はお薦めしないが)表題作を読みたいと思われる方がもしおられるなら、この記事は読まないでいただきたい。 やはり周庭氏は東野圭吾を読まない方が良いのではないか。また本邦の…

東野圭吾の長篇『聖女の救済』を読んで、松本清張の短篇「捜査圏外の条件」を思い出した

私が不思議でたまらないのは、東野圭吾が日本のみならず中国や韓国で人気があるらしいことだ。その中国の息のかかった香港当局に逮捕され、有罪判決を受けて収監された周庭氏も、村上春樹とともに東野圭吾の小説を読むという。 Admin:旧正月の間に友人が新…

物足りなさが残った東野圭吾『麒麟の翼』

この記事は最初『kojitakenの日記』のために書き始めたが、こちらのブログの方が適切かと思い、こちらに載せることにした。 昨日「kojitakenの日記」に公開した記事のタイトル「辞意表明の確率」から連想していたのは、一昨年春に読んだ松本清張の短編小説「…

松本清張に登山の手ほどきをした「登山家」と消息不明の山岳小説家・加藤薫はやはり別人の可能性が濃厚/id:peleboさんのコメントより

今年の新型コロナウイルス感染症で「QOL」(Quolity of Life)が下がったと感じておられる方は少なくないだろう。私もその一人だ。 在宅勤務では仕事にアクセス制限があって(テレワークなんか全然想定していなかった職場なのだ)なかなか進まなかったが、その…

松本清張『霧の会議』(上・下、光文社文庫)を読む

図書館で借りた松本清張の『霧の会議』上・下巻(光文社文庫)*1を返却しなければいけないので軽くまとめておく。 本作は清張晩年の1984年9月11日から1986年9月20日までの2年間、読売新聞に連載された新聞小説。余談だが、連載会議後すぐに読売ジャイアンツ…

鹿島槍ヶ岳に死す - 山岳の惨劇(最終回)松本清張「遭難」の創作に協力した登山家は加藤薫だったか

前回に続く連載4回目。馳星周選の『闇冥』(ヤマケイ文庫)に関する連載は、今回が最終回になる。 www.yamakei.co.jp 今回は、第1回で触れた松本清張と加藤薫、つまり同じ「遭難」というタイトルで同じ主人公名の山岳短篇を書いた2人の小説家のかかわりにつ…

鹿島槍ヶ岳に死す - 山岳の惨劇(第1回)松本清張「遭難」と加藤薫・序説

1年前、去年(2018年)3月に、このブログの下記記事にコメントをいただいた。 kj-books-and-music.hatenablog.com いただいたコメントは下記。ブログ管理画面で確認すると、「2018-03-12 22:32:28」のタイムスタンプがある。つまり今から1年1か月前。 通りす…

乱歩と清張:江戸川乱歩『D坂の殺人事件』(角川文庫)を読む

最初に、このエントリにはネタバレが含まれていることをお断りしておきます。 前エントリの佐々木譲『エトロフ発緊急電』の前、2月最初に読んだのが江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』(角川文庫)。どういうわけか、最近岩波を含めたあちこちの文庫本から乱歩の…

「下請けいじめ」を描いた松本清張『湖底の光芒』とカルロス・ゴーン

2012年に刊行が始まった光文社文庫の「松本清張プレミアム・ミステリー」のシリーズは、2017年の第4期まではかつて同社の「カッパ・ブックス」から出ていた本を文庫化したものだったが、昨年から来月2月8日発売の『中央流沙』までの第5期8作品は、光文社から…

高橋敏夫『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』に欠落している視点

光文社文庫から出ている「松本清張プレミアム・ミステリー」第5期全8タイトルのうち、今日から読み始めようと思っている『湖底の光芒』を読んだら、あとは2月8日発売予定の『中央流沙』を残すのみになる。これまでの4期21タイトルは全部読んだから、しばらく…

大作曲家アントン・ブルックナーは「計数マニア」だったか - 松本清張『数の風景』より

食わず嫌いを貫いてきた松本清張に突然はまったのは、2013年の晩秋に『Dの複合』を読んだ時だった。これが初めて読んだ清張作品だったが、頁をめくる指が止まらなかった。以後病みつきになり、昨年末までで110タイトルを読んだ。上下本や、文春文庫新装版で…

「真贋の森」〜清張の「美術もの」「学問もの」「復讐もの」の最高傑作

松本清張という人は、作品の完成度を高めるよりも、書きたいものを書きたいだけ書く営為を続けた人だったように思う。だからその作品は文字通り玉石混淆なのだが、たとえ「石」に該当する作品であっても強い訴求力を持つのが清張作品の魅力の一つだ。 そして…

「上海リル」と「上海帰りのリル」/松本清張と尾崎秀樹と「復讐」と

1930〜40年代には戦争にのめり込んで崩壊していった日本社会だが、今では年々没落の一途をたどる国勢に、政府や役所といった統治機構の腐敗を最高権力者とその妻が主導するというわけのわからない崩壊の過程をたどっているように見える。 アメリカ映画の挿入…

松本清張「捜査圏外の条件」と流行歌「上海帰りのリル」

このブログは「古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ」と銘打っていながら、音楽は一度も取り上げたことがなく、本も松本清張作品ばかりだ。だが、その清張作品をきっかけに、ようやく音楽絡みの話題を取り上げるチャンスが訪れた。 今年1月から読み始め…

松本清張『小説東京帝国大学』(ちくま文庫)を読む

今月は松本清張の長編を2作続けて読んだ。『神々の乱心』(文春文庫,2000)と『小説東京帝国大学』(ちくま文庫,2008)だ。前者は1990年から没年の1992年まで『週刊文春』に連載された未完の作品(単行本初出は文藝春秋,1997)で、後者は1965年から翌66年に…

松本清張の快作ミステリー「顔」- 鉄道の旅と「いもぼう」と「唇の厚い男」と

相変わらず松本清張にはまり続けている。2015年末頃からは「清張作品を読めるだけ読んでやろう」と思っており、上下巻を2冊に数える数え方で言えば、読んだ清張作品は既に100冊を超えた。少し前に清張処女作の「西郷札」を読んだが、今は清張絶筆となった未…

松本清張と杉田久女、森本六爾、直良信夫、それに父・峯太郎 - 『松本清張短編全集03 張込み』(光文社文庫)を読む

今年最初の更新でも、またまた松本清張作品を取り上げる。清張以外の小説も読んでるし、小説以外の本も読んでいるのだが、清張作品の場合、作品の背景を調べてみるといろいろ興味深いことを知ることができる機会が多いので、どうしても取り上げる頻度が増え…

松本清張の山岳ミステリー「遭難」と筆を折った山岳作家・加藤薫(追記あり)

このブログはずっと更新してなかったので、広告が表示されていた。年末年始の休みに入ったので久々に更新することにする。 と言っても、4年前からはまっている松本清張のミステリーについて書くのだが、最近、清張の比較的初期の短篇・中篇集である『黒い画…

松本清張『落差』に見る、半世紀以上前から変わらない「教科書」をめぐる攻防の構図

松本清張の『落差』を読んだが、この小説が掲載された媒体が『読売新聞』(1961〜62年連載)だったと知って、今昔の感にとらわれた。 落差 上 新装版 (角川文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日: 2009/12/25 …

松本清張『神と野獣の日』は、極右宰相・安倍晋三と北朝鮮のミサイル発射を半世紀前に予言していた!?

今月は松本清張作品を下記の中篇一作しか読んでいない。 神と野獣の日 (角川文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2008/05/24 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログ (5件) を見る 裏表紙に、下記のよう…

松本清張『空(くう)の城』を読み、「社賓とシャヒーンと暴走役員が破綻させた」安宅産業と、「私物化に走った世襲人士」安宅英一・鹿内春雄・安倍晋三に思いを致す

今週の月曜日から火曜日にかけて、来月7日限りでサービスが終了する「はてなカウンター」のアクセス解析で、6年前に書いた下記記事へのアクセスが妙に多いことを知り、なぜだろうと訝っていた。 d.hatena.ne.jp 下記ブログ記事を読んで、その理由がわかった…

松本清張『彩霧』は作者指折りの「駄作」か(笑)

松本清張は多作の人だったし、1950年代末から60年代前半にかけては、同時期にどのくらい多く書けるかの限界に挑んだ人だから、この期間には清張の代表作とされる作品も多く含まれるが、一方で駄作も少なからず産出している。だが、この時期の清張作品は、た…

松本清張『象徴の設計』を読む

山縣有朋(1838-1922)という、私の嫌って止まない長州の軍人・政治家を主人とした松本清張の歴史小説『象徴の設計』(文春文庫新装版,2003)を読んだ。 象徴の設計 (文春文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/08 メディア: 文庫 ク…

松本清張『風の視線』、『軍師の境遇』、『死の発送』を読む

3か月かけて全9巻の『昭和史発掘』(文春文庫, 新装版2005)を読んだあと、6月は月またぎで読んだ2作品をあわせて6タイトル9冊の清張の小説を読んだ。要するに清張の大半の作品を読もうという野望があるわけで、それももう中盤戦に差しかかってきたので、6作…

松本清張『昭和史発掘』(5)〜(9)(文春文庫新装版)を読む

松本清張『昭和史発掘』(3)(4)(文春文庫新装版)を読む(『KJ's Books and Music』) - kojitakenの日記(2017年5月6日)の続き。 昭和史発掘 (5) [新装版] (文春文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/07/08 メディア: 文庫 クリッ…

松本清張『昭和史発掘』(3)(4)(文春文庫新装版)を読む

先月、松本清張の『昭和史発掘』(文春文庫新装版=2005)の第3,4巻を読んだ。 昭和史発掘〈3〉 (文春文庫)[新装版] 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/05 メディア: 文庫 クリック: 4回 この商品を含むブログ (11件) を見る 昭和史発…

松本清張『表象詩人』(光文社文庫)を読む

この記事は、下記記事とほぼ同内容です。新ブログのテストを兼ねた記事です。 松本清張『表象詩人』(光文社文庫)を読む - kojitakenの日記(2017年4月16日) サンデーモーニング(4/16)の冒頭は北朝鮮、次がアメリカのシリア攻撃をめぐって米露は対立して…