KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

2022-01-01から1年間の記事一覧

黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書, 2002)を読む

今年後半は仕事に割かざるを得ない時間が多すぎて閉口した。9月には弊ブログの更新回数が一桁だったし、更新回数を増やした10月と11月は読んだ本がそれぞれアガサ・クリスティのミステリ1冊ずつという惨状。年末年始も来年早々の仕事のために一定の時間を割…

ベートーヴェンの「皇帝協奏曲」と「告別ソナタ」にはそっくりの箇所がある。その謎を解いてみた

ベートーヴェンの皇帝協奏曲(ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73)は亡父がよくレコードをかけていたので、昔からよく耳になじんでいた。 その後自分でもベートーヴェンを含むクラシック音楽を聴くようになったが、私の一番のひいきは最初はモーツァルトで、…

2022年8月に読んだ本 〜 アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』(ハヤカワ文庫・新訳版)、黒木登志夫『変異ウイルスとの闘い』(中公新書)

8月は非常に忙しくて本もまともに読めなかった。しかし2019年1月以来の43か月連続更新が途切れるのも癪なので、今月読んだたった2冊の本の書名を挙げておく。 1冊目は、昨年1月以来20か月連続で読んでいるアガサ・クリスティの『葬儀を終えて』。一昨年にハ…

中河原理という音楽評論家を知っていますか。氏は統一教会の機関紙『世界日報』に音楽時評を書いていた元朝日新聞記者

下記ツイートを見てふと「中河原理」の名前を思い出したのだった。 岡田克也、枝野幸男、安住淳氏が「世界日報」に登場したことがあったとは知らなかった。立憲民主党が統一教会問題にすぐに反応できなかったのは、こうした背景があったからなのか。与党と対…

中北浩爾『日本共産党 - 「革命」を夢見た100年』を読む - (1) 日本共産党の「民主集中制」の問題点

本記事は、当初『kojitakenの日記』の下記記事の後半部分として書き始めていたものだ。 kojitaken.hatenablog.com 以下、今年(2022年)5月に刊行された中北浩爾『日本共産党 - 「革命」を夢見た100年』(中公新書)を参照しながら、日本共産党の民主集中制…

本多勝一『アムンセンとスコット』(朝日文庫)は、本文もさることながら山口周の解説文が非常に示唆的

かつての朝日新聞のスター記者にして、1992年以降は『週刊金曜日』の創設者として知られる本多勝一が1980年代に書いた『アムンセンとスコット』(単行本初出は教育社,1986)が昨年末に朝日文庫入りした。それを買い込んで積ん読にしていたが、読み始めたら面…

ポーより早く探偵小説の原型を発表した(?)ディケンズ『オリバー・ツイスト』/後年の作品の萌芽を多く含む村上春樹『1973年のピンボール』

連休中にチャールズ・ディケンズ(1812-70)の長篇『荒涼館』(岩波文庫2017, 全4冊=原著1852-53)を読んだ余勢を駆って、同じ著者の有名作品ながら読んだことがなかった『オリバー・ツイスト』(原著1837-39)を2020年に出た光文社古典新訳文庫で読んだ。 …

チャールズ・ディケンズ作(佐々木徹訳)『荒涼館』(全4冊・岩波文庫)を読む

読み終えてから少し時間が経ってしまったが、休日が多かった今年の黄金週間に、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『荒涼館』全4冊(岩波文庫,2017)を読んだ。訳者は佐々木徹(1956-)で、図書館で借りて読んだ。 www.iwanami.co.jp www.iwanami.co.jp …

「翼をください」(赤い鳥、1971)は1977年に高校の音楽教科書で初めて知った

NHKの朝ドラなど見なくなってから四半世紀が経つが*1、現在放送中の「ちむどんどん」に、1971年の沖縄で「翼をください」が歌われていたのに違和感を持ったと書かれた記事があることを、下記ブログ記事経由で知った。 sumita-m.hatenadiary.com 記事の前半は…

保守野郎・エルガーが編曲した「ジェルサレム」が英労働党で愛唱され、左派人士・ホルストの「ジュピター」に歌詞をつけた愛国歌が右翼ネオリベ政治家・サッチャーの葬式で歌われていた

前回に続いてイギリスの作曲家、エドワード・エルガーとグスターヴ・ホルストとイギリス二大政党の話。 sumita-m.hatenadiary.com 「威風堂々」に対して、労働党の愛唱歌は「ジェルサレム」。今回書きたかったのはこの「ジェルサレム」の方なのだが、その余…

行進曲「威風堂々」で有名なエルガーは、自らの曲を保守党以外には使わせなかったつまらない保守作曲家だった。しかも「威風堂々」につけられた歌詞には、領土拡大を礼賛する帝国主義的な一節が含まれている。まるでプーチンの応援歌だ

私は2014年にコナン・ドイルのシャーロック・ホームズ全集を小林司・東山あかね訳の河出文庫版で読み、昨年1月以来アガサ・クリスティの全ミステリ読破を目指して読み続けている。後者については今月もミス・マープルもの長篇第7作の『パディントン発4時50分…

東野圭吾『白夜』(1999)は作者最高傑作の「暗黒小説」かも/新田次郎『山が見ていた』/アガサ・クリスティ『死が最後にやってくる』

今年の3月はあまり暇がなかった上にちょっとしたトラブルもあった散々な月だったが、2月24日に始まったウクライナ戦争で思い出していたのは先月読み終えた大岡昇平の『レイテ戦記』だった。熱帯のフィリピン・レイテ島と冬季の北の国とで気候は真逆だけれど…

「山本五十六提督が真珠湾を攻撃したとか、山下将軍がレイテ島を防衛した、という文章はナンセンスである。」(大岡昇平『レイテ戦記』より)

2月に読み終えた本は5タイトル7冊。多くの時間を割いたのは大岡昇平の『レイテ戦記』(中公新書, 2018改版)の第2〜4巻だった。ことに第2巻を読むのに難渋し、一度の週末では読了できずに2週間に分けた。それに続く第3巻はそれぞれ土日の2日間、第4巻は索引…

江戸川乱歩の発禁本「芋虫」は衝撃的/大岡昇平『レイテ戦記』第1巻(中公文庫2018年改版)と特攻隊

昨年(2021年)は読んだ100冊のうち42冊がアガサ・クリスティだった。今年はその比率を減らそう、というより自動的に減ることになる。というのは、ポワロもの長篇の6割(33冊中20冊)とミス・マープルもの長篇の半分(12冊中6冊)を読み終え、短篇集も半分以…