KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

「翼をください」(赤い鳥、1971)は1977年に高校の音楽教科書で初めて知った

 NHKの朝ドラなど見なくなってから四半世紀が経つが*1、現在放送中の「ちむどんどん」に、1971年の沖縄で「翼をください」が歌われていたのに違和感を持ったと書かれた記事があることを、下記ブログ記事経由で知った。

 

sumita-m.hatenadiary.com

 

 記事の前半は、沖縄返還の1972年5月15日(月曜日だったらしい)に、京都の学校が「半ドン」となり、午後の授業がなかったという話。私は兵庫県在住の小学生だったがその日の午後の授業があったかなかったかは全く覚えていない。

 後半が「翼をください」の話になる。元記事へのリンクを下記に示す。

 

news.yahoo.co.jp

 

 要約すると、1971年に「翼をください」という歌など知らなかった。それもそのはず、この歌は同年に発売された「赤い鳥」のシングル盤「竹田の子守唄」のB面曲だった。それがラジオ放送等により知られるようになった。音楽の教科書に載って学校の授業で歌われるようになったのは少しあとのことだ、とのことだ。

 実は私がこの歌を知ったのも、高校の音楽の教科書に出ている楽譜を見た時だ。1977年のことだった。コード進行がかなり変わっている。「赤い鳥」のボーカル・山本潤子はC(ハ長調)のキーで歌っているが、2〜3小節目に早くもC/B♭→ F が出てきてサブドミナントへの傾斜を見せたと思ったら、5小節目でD/C、つまりダブル(ドッペル)ドミナントが出てきて、予告とは逆方向、つまりドミナント(G)へ転調する(7小節目まで)。またサビの部分で二度B♭が唐突に出てくる。これらが面白いと思った。なおコードは教科書に載っていたように記憶する*2。下記YouTubeの動画にコード進行が示されている。

 

www.youtube.com

 

 この記事を書きながらいくつかYouTubeの動画を視聴したが、やはり最初にシングルを出した山本潤子の独擅場だと思った。オリジナルのシングル(結構テンポが速い)の他、テンポの遅いバージョンやロック色の強いバージョンなどいろいろあって、どれも面白かった。女性歌手でこの曲をCのキーで歌える人は少ないだろう。あの高音に特徴のある岩崎宏美のシングルでも高いFの音はほとんどなかったように記憶する。それを山本は楽々と歌っているように聞こえる(もちろんMISIAあたりなら楽勝だろうけど)。同じ山本でも「ふたりっ子」のイモ役者とは雲泥の差だ。但し後年の動画ではさすがの山本もキーを下げて(Aで)歌っていた。なお、サビに出てくるダブルサブドミナントはバージョンによっては他のコードに差し替えられている。たとえば視聴回数がもっとも多いと思われる下記の動画で山本はAで歌っているが、二度目のダブルサブドミナントはG(原曲ではB♭)がB7/A(同D7/C)に代えられている。これも悪くはなく、同じパターンを繰り返すのではなく二度目には違うコード進行で、という意図なのだろうが、私はオリジナルで覚えているのでそちらに軍配を上げてしまう。

 

www.youtube.com

 

 他の人たちの動画もいくつか視聴したが、いずれも山本潤子(赤い鳥)には及ばないというのが私の感想だ。中でも最悪だったのは平原綾香のバージョンで、私が視聴した動画ではキーをGあたりに下げて歌っていた上、歌い出しの部分のコード進行が滅茶苦茶だった。あまりにもセンスがない編曲に呆れて、サビの部分の前に視聴を止めてしまった。もちろん一番悪いのは編曲だが、こんなのを認めてこれで歌ってしまう平原も平原ではなかろうか。

 

 なお、Wikipediaによると、

 1973年9月25日にはやまがたすみこが『あの日のことは やまがたすみこフォークアルバム第二集』の1曲としてカバーし、澄んだのびやかな歌声でこの曲のファンを増やした。

とのことだが、やまがたすみこバージョンには残念ながら接していない。

 

 上記Wikipediaの続きの部分を少し引用する。

 

1976年以後、音楽教科書にもたびたび掲載されている[1]。教科書出版社の教育芸術社橋本祥路が教科書に収録して以来、合唱曲として有名となり、1970年代後半から学校教育の場でもよく採り上げられるようになっていた。そのため、日本国内では老若男女誰もが歌える愛唱歌である。

FIFAワールドカップフランス大会予選のUAE戦(1997年10月26日開催)からサッカー日本代表チームの応援歌として歌われるようになった[2]。1998年にはこれに便乗する形で小宮悦子川平慈英山本シュウらによって結成された企画ユニット「ザ・つばさーず」が「翼をください」をレコーディングし、同年3月発売のミニアルバム『サッカー天国』に収録した。

1998年長野オリンピックでは山本潤子版が、2021年2020年東京オリンピック開会式ではスーザン・ボイルの英語詞版が流れた。

2007年には「日本の歌百選」に選出された。

 

出典:翼をください - Wikipedia

 

 ああ、そういやW杯の予選で歌われてたっけなあ、と思い出した。これも四半世紀前の1997年のことだ。私が1977年に音楽の教科書で接したのは、この歌を音楽の授業で教えるようになって2年目という早い例だったようだ。

 しかし「日本の歌百選」というのには抵抗がある。あの技巧的なコード進行や転調は全然「日本らしくない」と私には思われるからだ。これは間違っても悪口ではないので誤解なきよう。

*1:最後に熱中して見たのは、あの山本太郎なる大根役者が出演していた「ふたりっ子」(1996-97)だった。

*2:但し教科書に載っていた楽譜のキーがCだったか、それともB♭(変ロ長調)あたりに移調されていたかまでは覚えていない。CかB♭のどちらかだったような気はするが。