2023-01-01から1年間の記事一覧
すっかり暇なし状態が続いてしまった今年の12月だが、家に仕事を持ち込んだ時にも、その仕事をやりながら音楽だけは聴けるので、10月末に買い込んだマレイ・ペライアのモーツァルトピアノ協奏曲全集を2か月かけて聴き終えた。私は渋谷のタワーレコードの店頭…
モーツァルトについてもう少し書いておきたい。 初めに、前々回に取り上げたK13のいわゆる「フルートソナタ」をオリジナル版で弾いた動画をリンクしたが*1、動画でピアノを弾いていた加藤友来(ゆら)さんという少女が成長してチェンバロ奏者になっているこ…
この週末は大江健三郎と吉田秀和を再発見というか、大江に関しては新発見した。このことによって、一昨日と昨日の土日は、いつまで続く(続けられる)かは全くわからない今後の人生において大きな転換点になるかもしれないと思った。 まず大江健三郎について…
2023年はまだ50日ほど残しているが、CDショップに行く頻度がここ数年ではもっとも多く、といっても2か月に一度くらいのペースだが(近年は年に1度しか行かないか、さもなくば全く行かないかのペースだった)、主にクラシック、一部にジャズのCDを買って聴い…
トマ・ピケティの『資本とイデオロギー』(原書2019, 邦訳みすず書房2023=山形浩生・森本正史訳)は、邦訳が出たばかりの8月下旬に買ったけれどもまだ1ページも読んでいない。まとまった時間がとれないからだが、この本を読みながら連載記事を断続的に公開…
10月はここまでずっと仕事に忙殺された。少なくとも来年1月前半までは仕事に追われそうだ。しかもその3冊のうち1冊は、9月中に大部分を読んでいて月の最初の日である10月1日の日曜日に読み終えた本だった。それがアントン・チェーホフ(1860-1904)が20代半…
初めにお断りしておきますが、この記事は表記作品のネタバレが満載ですので、当該の小説を未読の方にはおすすめしません。 8月最後の日曜日に区立図書館に行った時、今まで全巻揃っているのを一度も見かけたことがなかった宮部みゆきの『模倣犯』全5冊(新潮…
先週公開したガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』の記事に、トルストイが『アンナ・カレーニナ』の中で、後年『オペラ座の怪人』ヒロインのモデルとされたスウェーデン出身の女声オペラ歌手に言及していたことに触れたので、3回連載を予告しながら未だに締…
前回取り上げた『黄色い部屋の秘密』を書いたガストン・ルルーのもう一つの代表作『オペラ座の怪人』(1910)は昨日(9/2)、2022年に出たばかりの新潮文庫の村松潔訳で一気読みした。 www.shinchosha.co.jp 役者の村松潔は東京都江東区出身で1946年12月1日…
ミステリのネタバレは今では禁物とされているけれども昔は横行していた。私が小学生時代に子ども用にリライトされた版で読んだガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』も犯人を知らされた上で読んだから興味は半減だった。 この作品を自作のミステリ『複数の時…
私が現在住む東京都江東区出身のミステリ・歴史小説作家で私と同世代の宮部みゆきが2010年に書いた非ミステリの現代小説である『小暮写眞館』を読んだ。もとは講談社の創業100年を記念して2010年に刊行された作品とのことで、700ページを超える分厚いハード…
少し間が空いたが、7月23日に公開した下記記事の続き。 kj-books-and-music.hatenablog.com トルストイの中篇「クロイツェル・ソナタ」は、妻の不貞を疑った夫が、仕事のために外出して空けているはずの家に帰ってきて、疑っていたヴァイオリニストが妻と一…
予定を変更して東野圭吾の「腐敗した」という感想しか思い浮かばない邪悪なミステリ『レイクサイド』(文春文庫)をぶっ叩くことにした。私は『容疑者Xの献身』(文春文庫)を読んで以来東野圭吾が大嫌いだが、たまに東野を批判するためだけに東野の小説を読…
私が初めて読んだトルストイの小説は『アンナ・カレーニナ』で、もう40年前のことだった*1。これは面白かったが、次に読んだ『戦争と平和』にはへこたれた。特に、物語の流れをしばしば中断して長々と展開されるトルストイの自説の開陳に辟易し、それでもな…
今週の超多忙期に入る直前の先週、もうすぐしたらネットもできなくなるし本も読めなくなるとわかっていたら、却って読書欲が増して半藤一利の『ノモンハンの夏』(文春文庫, 2001)と船戸与一の『砂のクロニクル』(小学館文庫上下巻, 2014)を相次いで読ん…
岡田暁生と片山杜秀が『ごまかさないクラシック音楽』というタイトルの対談本を新潮選書から出したらしく、本を宣伝するための対談記事が新潮の『波』のサイトに載っている。 www.shinchosha.co.jp ebook.shinchosha.co.jp 私が読んだのは対談の方だけだが、…
今月は新しく読み終えた本が7冊。少し元のペースに戻したが、それでも2010年代に年間100冊をめどにしていた頃には戻っていない。 読み終えた本の中に小泉悠の『ウクライナ戦争』(ちくま新書,2022)がある。 www.chikumashobo.co.jp 今頃になってやっと読め…
昨日(5/26)読み終えた鈴木大介『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)が講談社から販売中止になり、同社のサイトに回収の告知がされていた。 bookclub.kodansha.co.jp この本の読後感を一言で書くと、正直言って甚だしく「期待外れ」の本だったが、そ…
黄金週間最後の日曜日から金曜日までかけて、チャールズ・ディケンズの『二都物語』(加賀山卓朗訳, 新潮文庫版2014)を読んだ。 www.shinchosha.co.jp 最初に大事なことを書いておくと、今回の読書では非常な幸運に恵まれた。というのは、本作の末尾に非常…
連休後半に小松左京(1931-2011)の『日本沈没』(1973)を2020年のハルキ文庫版上下巻で読んだ。初出は光文社のカッパ・ノベルス。図書館本で読んで、今日が返却日なので簡単にメモを残しておく。 この本は少年時代からいつか読もうと思いつつ長年放置して…
坂本龍一の訃報に接して1か月以上が経ったが、未だに私の主たる関心事は音楽、音楽史及び音楽の受容史であり続けている。 弊ブログの読者には政治に関心がある方が多いと思うので、それに絡めて書くと、私は1980年代初めに当時の国鉄吉祥寺駅*1に付随した商…
4月に読んだ本は5冊だけだったが、うち4冊がミステリで、しかもその中には批判する目的でしか読まない東野圭吾作品が1つ含まれている。昨年来の多忙の疲れが新年度に入ってもまだ残っている体感がある。だから打率1割4分台にまで落ちてスワローズ7連敗の戦犯…
1回飛んでしまったスウィングル・シンガーズの記事に今回で区切りをつけたい。 バッハをスキャットで歌って60年前に一世を風靡した当時フランスのグループ、スウィングル・シンガーズのデビューアルバムに、バッハのチェンバロ(ハープシコード)のためのパ…
『kojitakenの日記』に公開した島田雅彦を批判する記事を書くために大岡昇平の『成城だより』全3冊(中公文庫)を調べていたら、同じサ行の姓の坂本龍一への言及が何箇所かあった。 大岡の日記に初めて坂本が登場するのは1980年5月8日。当時大岡71歳、坂本28…
先週月曜日(4/10)に公開した下記記事に続いて、坂本龍一とYMO、それにスウィングル・シンガーズによるジャズのバッハなどの話をする。 kj-books-and-music.hatenablog.com 歳をとることの最大のメリットは、生きてきた間に起きたいろいろな変化を思い起こ…
亡くなった坂本龍一がバッハに傾倒していたことから、昨日はバッハをジャズのアカペラ・ヴォーカル・グループであるスウィングル・シンガーズがスキャットの歌唱法(歌詞なしの「ダバダバ」)で歌った動画(あるいは静止画と音声)をずっとYouTubeで視聴して…
今回は短い記事。ミステリのネタバレを含むためにメインブログの『kojitakenの日記』ではなくこちらで取り上げる。 あの「稀代の悪書」が300万部、その「作品」を含む著者の本が1億部とは、世も末だな。 以下朝日新聞デジタルより。 www.asahi.com 東野圭吾…
初めにお断りしておきますが、本記事はタイトルの東野圭吾作品のほか、同じ東野の『容疑者Xの献身』、それにアガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』及び『スタイルズ荘の怪事件』のネタバレを含みます。さらにタイトルからも明らかな通り筆者は大のア…
前回に続く、ゴルトベルク変奏曲の記事の後半。 今回の記事を書くためにかけたネット検索で、バッハがゴルトベルク変奏曲を作曲するヒントになったと思われるドイツ北部・リューベックの作曲家、ブクステフーデの「アリア『ラ・カプリッチョーザ』による変奏…
AppleによるとMacの寿命は4年らしいが、2009年Lateに製造された21.5インチのiMacを2010年6月頃に買って12年半も使ってしまった。ここ数年ははめちゃくちゃな動作の遅さになっていたし、ハードディスクの寿命(今でも耐用年数は5年くらいとされているらしい)…