KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

アガサ・クリスティ

2022年8月に読んだ本 〜 アガサ・クリスティー『葬儀を終えて』(ハヤカワ文庫・新訳版)、黒木登志夫『変異ウイルスとの闘い』(中公新書)

8月は非常に忙しくて本もまともに読めなかった。しかし2019年1月以来の43か月連続更新が途切れるのも癪なので、今月読んだたった2冊の本の書名を挙げておく。 1冊目は、昨年1月以来20か月連続で読んでいるアガサ・クリスティの『葬儀を終えて』。一昨年にハ…

東野圭吾『白夜』(1999)は作者最高傑作の「暗黒小説」かも/新田次郎『山が見ていた』/アガサ・クリスティ『死が最後にやってくる』

今年の3月はあまり暇がなかった上にちょっとしたトラブルもあった散々な月だったが、2月24日に始まったウクライナ戦争で思い出していたのは先月読み終えた大岡昇平の『レイテ戦記』だった。熱帯のフィリピン・レイテ島と冬季の北の国とで気候は真逆だけれど…

「山本五十六提督が真珠湾を攻撃したとか、山下将軍がレイテ島を防衛した、という文章はナンセンスである。」(大岡昇平『レイテ戦記』より)

2月に読み終えた本は5タイトル7冊。多くの時間を割いたのは大岡昇平の『レイテ戦記』(中公新書, 2018改版)の第2〜4巻だった。ことに第2巻を読むのに難渋し、一度の週末では読了できずに2週間に分けた。それに続く第3巻はそれぞれ土日の2日間、第4巻は索引…

2021年12月に読んだ本;斎藤幸平『人新世の「資本論」』、東野圭吾『むかし僕が死んだ家』とアガサ・クリスティ『カーテン』と浦沢直樹『MONSTER』のトライアングル、そして佐藤優の駄本『生き抜くためのドストエフスキー入門』など

今年(2021年)も昨年に続いて思うような読書はできなかった。昨年は66冊*1しか読めなかった。ちょうど100冊を読みはしたものの、半分以上が10年前には見向きもしなかったミステリだった。うちアガサ・クリスティ作品が42冊(冒険ものなどを含む)だった。昨…

アガサ・クリスティ『杉の柩』を読む 〜 個の時代へと拡散していく流れにクリスティ作品の「類型の人物像」が対応しきれなくなったとの山野辺若氏の指摘が興味深い

1940年にアガサ・クリスティの『杉の柩』に、当時13歳か14歳だったプリンセス・エリザベスの未来の良人(おっと)選びの話が出てくることを『kojitakenの日記』に書いた。 kojitaken.hatenablog.com 上記記事を書いた時点では半分くらいしか読んでいないが、…

クリスティ『ポアロのクリスマス』にまたも完敗。前作『死との約束』に続いて「連続完封」を喫した

アガサ・クリスティの『ポアロのクリスマス』(1938)。また犯人を当てられなかった。一頃クリスティものは連戦連勝だったが、前作『死との約束』(1938)に続く連敗。それも全く同じようなパターンでやられた。プロ野球中日ドラゴンズの柳裕也と大野雄大に…

"Roman holiday"(ローマの休日?)の本当の意味を教えてくれたアガサ・クリスティ『死との約束』は読者を選ぶかもしれないが「隠れた名作」だ

はじめに、今回はミステリ作品の犯人当てに関するネタバレを極力避ける努力をしてみた。だから今回は作品を未読の人は読まないでいただきたいとは書かない。但し、記事から張るリンクの中にはネタバレが含まれるかもしれない。また、ネタバレは極力避けたと…

『容疑者Xの献身』再々論〜東野圭吾は「出題を理解できない読者」を挑発していた/A.A.ミルン『赤い館の秘密』/江戸川乱歩がクリスティの『予告殺人』を激賞した理由/小説と戯曲・映画で異なる『そして誰もいなくなった』の結末

江戸川乱歩が選んだミステリ十傑のひとつであるA.A.ミルン(1882-1956,『クマのプーさん』の作者として有名)の『赤い館の秘密』(創元推理文庫, 2017年の山田順子による新訳版)を読んだ報告から始める。今からちょうど100年前の1921年の作品で、アガサ・ク…

E・C・ベントリー『トレント最後の事件』(1913)は名作。『アクロイド殺し』が好きな人はきっと気に入る

このところ、戦前から戦後初期にかけての日本における英米、特にイギリスのミステリの受容史への関心が高まっている。その一環として、2017年に創元推理文庫から45年ぶりに改版されたE・C・ベントリーの『トレント最後の事件』(1913)を読んだ。これは新訳…

フィルポッツ『赤毛のレドメイン家』、クリスティ『予告殺人』『シタフォードの秘密』、横溝正史『蝶々殺人事件』、坂口安吾「推理小説論」を読む(ネタバレ若干あり)

本記事には、表題作その他のミステリのネタバレが若干含まれているので、これらの作品を未読かつ読みたいと思われる方は、本記事を読まれない方が賢明かと思う。 最近多く読んでいるアガサ・クリスティ(29冊)から少し離れて、同時代の人であるクロフツが19…

クロフツの倒叙推理の名作『クロイドン発12時30分』とアガサ・クリスティの某作を立て続けに読んだら、トリックがそっくりだった(驚)

19〜20世紀に推理小説の本場だったアメリカとイギリスで、20世紀半ば頃の日本の「本格推理小説」が「静かなブーム」とのことだ。 www.newsweekjapan.jp 日本の「本格推理小説」の開祖は江戸川乱歩で、1923年に発表された「二銭銅貨」がその記念すべき第一作…

2021年5〜7月に読んだ本; 吉見俊哉『東京復興ならず』/カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』/成長を続けたアガサ・クリスティと衰退の一途をたどる東野圭吾

5月の連休明けからずっと忙しく、一昨年以来2年半の間、弊ブログを最低月1回更新してきた記録が途切れるピンチになった。そこで、このところ読んだ本(大半が小説で、うち半分以上がミステリだが)をいくつか取り上げて感想を軽くまとめてみる。 まず、小説…

クリスティ『邪悪の家(エンド・ハウスの怪事件)』と『エッジウェア卿の死』/ハヤカワ「クリスティー文庫」の「裏表紙」は読むな!!!

はじめにおことわりしますが、今回の記事はタイトルの2作の他、『アクロイド殺し』などのアガサ・クリスティ作品のネタバレが全開なので、これらのミステリ小説を未読でそのうち読みたいと想われる方は読まないで下さい。 5月の連休明け翌週の月曜日(5/10)…

『アクロイド殺し』の○○トリックは「史上初」ではなく40年前にチェーホフが使っていたが「イギリスで初めて麻雀シーンを登場させた小説」だったらしい

前回取り上げたアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』で一番驚かされたのは、まさか半世紀前にクラスメートの心ないネタバレによって最後まで読み切れなかったあの本が、最近になって犯人を知らないままに読んだ同じクリスティの何冊かの本よりもはるかに…

犯人を知っていて読んでも抜群に面白かったアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』

初めにおことわりしておきますが、表題作を未読の方はこの記事を読まないようにお願いします。それどころか検索語「アクロイド」でネット検索をかけることも絶対にお薦めできません。露骨なネタバレは行いませんが、それでも容易に真相の見当がついてしまう…

アガサ・クリスティ『ミス・マープルと13の謎』(深町眞理子訳、創元推理文庫)を読む

前回に続いてアガサ・クリスティを取り上げる。最初に書いておくと、クリスティのミス・マープルものの短篇集である創元推理文庫の『ミス・マープルと13の謎』(深町眞理子訳, 2019)とハヤカワ文庫の『火曜クラブ』(中村妙子訳, 2003)は同じ作品の翻訳だ…

アガサ・クリスティ『ゴルフ場殺人事件』と東野圭吾『容疑者Xの献身』の感心しない「共通点」

初めにおことわりしますが、このエントリにはアガサ・クリスティ(1890-1976)及び東野圭吾の推理小説に関するネタバレが思いっ切り含まれているので、それを知りたくない方は読まないで下さい。 今年(2021年)に入ってクリスティ作品を4冊読んだ。 実は私…