KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

クリスティ『ポアロのクリスマス』にまたも完敗。前作『死との約束』に続いて「連続完封」を喫した

 アガサ・クリスティの『ポアロのクリスマス』(1938)。また犯人を当てられなかった。一頃クリスティものは連戦連勝だったが、前作『死との約束』(1938)に続く連敗。それも全く同じようなパターンでやられた。プロ野球中日ドラゴンズの柳裕也と大野雄大に連続完封された(幸い今季はそのような例はなかったが)ような読後感だった。

 

www.hayakawa-online.co.jp

 

 前述の通り、本作は前作『死との約束』と双子のような関係にある。思い出したのはポワロもの第6作の『エンドハウスの怪事件(邪悪の家)』(1932)と第7作の『エッジウェア卿の死』(1933)がやはり双子のような作品だったことで、こちらは2作とも犯人は簡単にわかり、後者はトリックまでわかった。この2作を読んだ時には交流戦ソフトバンクを3タテした時*1みたいな読後感だったといえるかもしれない。

 『ポアロのクリスマス』の「意外な犯人」には偉大な先例があり、そこは『アクロイド殺し』と異なる。前作『死との約束』自体が大きなヒントになっているし、作中に「えっ、これってあの人の特徴じゃないか」と思わせるヒントが大胆に書かれていたのに、それを気に掛けながらも犯人ではないかと疑うことをしなかった。つまり犯人候補から外してしまったのは不覚だった。偉大な先例の存在は知っているにもかかわらず、というよりあまりにも有名なその先例があったからまさか同じことはやってこないだろうという思い込みがあった。そういう読者の心理を作者は巧妙に突いてきた。完敗だ。だから柳か大野の投球術にやられたみたいな読後感だったのだ。

 この第16作『死との約束』と第17作『ポアロのクリスマス』とのペアは、前記第6作『エンドハウスの怪事件』と第7作『エッジウェア卿の死』とのペアよりも人気が落ちるくらいではないかと思うが、私はこの間の6〜7年に、クリスティはずいぶん経験値を上げたと評価したい。

 前作と大きな共通点を持つ作品を連ねていくという山脈を思わせるようなクリスティ作品の特徴は、本作にも典型的に見られた。

 惜しむらくは、村上啓夫(ひろお, 1899-1969)の訳文が古くていささか読みづらいこと。田村隆一(1923-1998)だとまだそれほど気にならないが、本作の村上訳はかなり気になった。新訳版が出たらまた読み直してみたいと思う。

 下記「アマゾンカスタマーレビュー」の評者には敬意を表する。翻訳に関する意見は同じだが、私はクリスティのパターンがわかってきたと思っていたのにやられた。

 

★★★★☆ ポアロ初心者にもお勧め。犯人を当てられてうれしかったです。

Reviewed in Japan on February 20, 2021

 

コロナの自粛期間中にすっかりアガサクリスティ―にはまり、特にポアロシリーズが好きでコツコツと読んでいます。

この作品も、ポアロらしくあっという間に読み終わってしまいました。

ここ最近ポアロシリーズを読んでいるので後半部分で犯人がわかりました。

全くトリックなどはわからなかったので、ただの勘ですが。

 

アガサクリスティーの作品は登場人物が多く、海外の名前なのでなかなか覚えられず誰が誰だが途中でわからなくなるのですが、こちらの作品は比較的登場人物が夫婦が多くシンプルなのでわかりやすかったです。

初心者にもお勧めできると思います。

 

ただ個人的に翻訳があまり良くない気がします。今まで何冊かシリーズを読んできましたが一番しっくりきませんでした。新訳が出てくることを望みます。

その為星を四つにしました。

 

出典:https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R10LR8E3RYRARM

 

 前作『死との約束』と共通点が多く、若干の「二番煎じ」感があるため、私はその分だけ前作より評価を低くするが、それでもポワロシリーズ屈指の佳作に数え入れて良いのではないか。

*1:セ・リーグの某在京球団は存在自体が不愉快なので引き合いには出さない。