KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

「浪花のモーツァルト」キダ・タロー死去

 最近はこちらのブログにほとんど記事を書いていないので、こちらにこの記事を公開することにした。

 関西の大衆音楽の作曲家、キダ・タローが亡くなった。享年93。

 以下NHKニュースより。

 

キダ・タローさん死去 93歳 作曲家 CMソングなど多く手がける

2024年5月16日 2時02分

 

「浪花のモーツァルト」の愛称で親しまれた作曲家のキダ・タローさんが14日亡くなりました。93歳でした。

キダ・タローさんは兵庫県宝塚市出身で、高校時代に音楽バンドを結成したあと大学を中退し、その後、ピアニストや作曲家として活動しました。

NHKの番組「バラエティー生活笑百科」のテーマソングや北原謙二さんの「ふるさとのはなしをしよう」といった歌謡曲のほか、かに料理店やインスタントラーメンのCMソングなど親しみやすい音楽も数多く手がけました。

また、テレビやラジオの番組にも多く出演し、民放のバラエティー番組、「探偵!ナイトスクープ」では「浪花のモーツァルト」という愛称で親しまれ、関西を中心に幅広く活動していました。

 

所属事務所のホームページによりますと、14日亡くなったということです。93歳でした。

所属事務所は「お世話になった関係者の皆様、応援してくださったファンの皆様に心より感謝お礼申し上げます。これからもキダ・タロー先生の作品が皆様に愛され続けることを切に願います」とコメントしています。

 

NHKニュースより)

 

URL: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014450781000.html

 

 私は『探偵! ナイトスクープ』は中国・四国に住んでいた頃にたまに見ていた程度でほとんど知らないが、子ども時代はずっと関西だったので、ABC朝日放送の番組のテーマ曲を多く作っていたことや、同じABCのラジオに自らの名前を冠した番組や番組中のコーナーを持っていたことを知っていた。しかしその頃は「浪花のモーツァルト」という愛称は持っておらず、ネットで調べたら1990年頃に『探偵! ナイトスクープ』でプロデューサーの松本修命名されたらしい。あの「アホバカ分布図」の生みの親だ。

 彼が作った音楽の中でもっとも印象に残っているのは、「家庭塗料はアサヒペン!」で終わるコマーシャルの音楽だ。

 

www.youtube.com

 

 このCMソングは短調なので妙に印象に残った。最初に耳にしたのは1960年代末か1970年頃だったと記憶する。巨泉と前武がやっていたゲバゲバ90分だったかどうか、、毎週見ていたテレビ番組が始まる直前に「家庭塗料はアサヒペン!」とやっていたような気がする。ただアサヒペンは大阪発祥の塗料メーカーなので、東京キー局の放送には当てはまらない可能性が高い。

 最近もこのコマーシャルをよく思い出すのだが、それはアサヒペンの東京本社が江東区猿江にあるからだ。江東区役所のある四つ目通りを錦糸町墨田区)に向かって北上していくと、ビルのてっぺんにアサヒペンのロゴが目に入る。そのたびに「家庭塗料はアサヒペン」というCMソングの最後の部分を思い出すのだった。

 下記はアサヒペンのサイトに掲載されたキダ・タローのインタビュー。

 

アサヒペンのCMでは定番となっている「オーマイカラー」。
作曲いただいた経緯や背景を「キダタロー先生」にインタビューして迫っていきたいと思います。

 

Q. いつ、どこからの依頼で制作いただいたのですか?

1960年頃、私が30代の血気盛んな頃です。朝日放送の「CMスポット・コンクール」という十数年続いた人気企画で、CMを作りたいという企業を募集していました。その中からアサヒペンさんが選ばれ、私がCMソングの制作を担当することになったんです。

 

Q. 作曲される時、すでにアサヒペンをご存知でしたか?

存じ上げていなかったんですが、モダンな会社だろうなというイメージをもっていました。「アサヒペン」という社名が非常に印象的なんですよね。塗料だからアサヒペイントになりそうなところ、ペンとなっている。そこがいいんですよ。

 

Q. 曲作りの時に、すでに歌詞はありましたか?

はい、歌詞が先にありました。ひと目見たときに「とてもいい歌詞だ!」と感じたことを今でもはっきりと覚えています。私が作った数千曲の中で、この歌詞は10本の指に入る作品です。特に出だしの「オーマイカラーアサヒペン、マイホームアサヒペン・・・」が実に素晴らしい!作者は天才だと思いますよ。

 

Q. 作りはじめてどれくらいで出来上がりましたか?

とても早くできました。詩には重要な核になる部分「詩のヘソ」というものがあるんですが、最初の1行「オーマイカラーアサヒペン」がヘソです。そこから湧いてくるイメージが短調だったんです。CMソングは強く明るい印象を伝えないと行けないんで長調が基本です。何度も長調にしようと試みましたが、そこは絶対に変えられなかったです。よし、短調で行くぞ!と腹が決まれば、一気に曲作りが進みました。ヘソができたらほぼ完成、後は流れるように出来上がっていきました。

長調はきれいな音階で、強く明るい印象を与えるのに対して、短調は暗く、悲しい印象を与える音階。

 

Q. 曲作りされている中で、何かエピソードはありましたか?

一流シンガーの「スリー・グレイセス」という女性3人グループが唄うことが決まっていました。私も大好きで、気合い入れて曲を書きました。収録には是非とも立ちあいたかったんですが、収録スタジオが東京でスケジュールが合わなくていけなかったんです。それがとても残念でした。

 

Q. 出来栄え、満足度はいかがですか?

とても満足しています。私はCM曲を作る時に、その企業の社長になったつもりで臨んでいます。「この会社の悪口をいう人間がいたら絶対に許さない!」そう思うほど、まるで身内になったような感覚です。だからアサヒペンさんもこのCMソングも大好きです。コンサートでは必ず演奏しています。

 

URL: https://www.asahipen.jp/interview/

 

 確かに短調だから他の多くのコマーシャルソングと違って印象に残ったのかもしれない。1960年だとまだ東海道新幹線も開通していなかったから大阪から東京までは簡単に行けず、コマーシャルソングの収録に立ち会えなかったものだろう。

 上記リンクに掲載された「プロフィール」によれば「本人はモーツァルトよりショパン好き」とのこと。確かにアサヒペンのCMソングはモーツァルトからはかけ離れているが、ショパンでもないだろう、あえて当てはめるならメンデルスゾーンあたりではないかと思うが、そんな野暮な話をしてもしかたがない。いかにも1960〜70年代の大衆音楽にありそうなメロディーではあるが、そういうを量産できる、イタリアあたりの音楽家に多そうな才能の持ち主だったように思われる。それはそれでたいしたものである。

 短命だったモーツァルトショパンメンデルスゾーンらと違って、93歳の長寿を全うされた。だからお悔やみの言葉は書かないでおく。以前福島県出身の方に、大往生された方に対しては赤飯を炊いてお祝いをすると聞いたことがある。