KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

読書

星野智幸『呪文』を読む

しばらく前に、私が購読しているブログで下記の文章にお目にかかった。 sumita-m.hatenadiary.com 鴻巣さんは「若い彼らは「顔が青いよ」とおなじように、「その答え、ちがいよ」と言ったりするのだろうか?(たぶんそれはない)」という。でも、それはある…

「長州がつくった憲法が日本を滅ぼすことになる」 〜 城山三郎『落日燃ゆ』を読む

城山三郎の『落日燃ゆ』を読んだ。 落日燃ゆ (新潮文庫) 作者: 城山三郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1986/11/27 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 94回 この商品を含むブログ (61件) を見る A級戦犯として文官ではただ一人死刑(絞首刑)に処せられ…

早乙女勝元『螢の唄』と東京大空襲

東京大空襲を題材にとったこの小説は3年前に新潮文庫入りした時買おうと思って買いそびれたのだが、東京大空襲の日である3月10日の日曜日に図書館で借りて、翌3月11日(東日本大震災の日)から読み始めて3月13日(大阪大空襲の日)に読み終えた。もとは映画…

星野智幸『ファンタジスタ』を読む

星野智幸の中篇集『ファンタジスタ』(集英社文庫2006)を読んだ。集英社文庫版(2006)は、今時の新潮文庫や講談社文庫や光文社文庫などと違って文字が小さかったが、大きな文字の版が出ていないのでそれは仕方がない。この中篇集には「砂の惑星」(雑誌初…

金子夏樹『リベラルを潰せ』を読む

正直言って国際政治には無知もいいところなのだが、ウラジーミル・プーチンという人間は昔から大嫌いだ。KGBにいた後ろ暗い過去、2006年のリトビネンコ毒殺事件をはじめとする数々の殺人事件にプーチンの関与があったのではないかと疑っていること、さらには…

吉行淳之介の短篇「あしたの夕刊」とつのだじろうの漫画『恐怖新聞』、それに石川淳、ムソルグスキー

下記のアンソロジーを読み終えた。 名短篇、ここにあり (ちくま文庫) 作者: 北村薫,宮部みゆき 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2008/01/09 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 49回 この商品を含むブログ (64件) を見る これは11年前に出た文庫本だが、…

小松左京「眠りと旅と夢」(1978)に「携帯電話」が出てきた

まず現在読んでいる本から引く。 村上さんのところ (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/04/27 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (6件) を見る この本は473件の質問に村上春樹が答えるという趣向で、その後プロ野球セ・リー…

「真贋の森」〜清張の「美術もの」「学問もの」「復讐もの」の最高傑作

松本清張という人は、作品の完成度を高めるよりも、書きたいものを書きたいだけ書く営為を続けた人だったように思う。だからその作品は文字通り玉石混淆なのだが、たとえ「石」に該当する作品であっても強い訴求力を持つのが清張作品の魅力の一つだ。 そして…

「上海リル」と「上海帰りのリル」/松本清張と尾崎秀樹と「復讐」と

1930〜40年代には戦争にのめり込んで崩壊していった日本社会だが、今では年々没落の一途をたどる国勢に、政府や役所といった統治機構の腐敗を最高権力者とその妻が主導するというわけのわからない崩壊の過程をたどっているように見える。 アメリカ映画の挿入…

松本清張『小説東京帝国大学』(ちくま文庫)を読む

今月は松本清張の長編を2作続けて読んだ。『神々の乱心』(文春文庫,2000)と『小説東京帝国大学』(ちくま文庫,2008)だ。前者は1990年から没年の1992年まで『週刊文春』に連載された未完の作品(単行本初出は文藝春秋,1997)で、後者は1965年から翌66年に…

松本清張と杉田久女、森本六爾、直良信夫、それに父・峯太郎 - 『松本清張短編全集03 張込み』(光文社文庫)を読む

今年最初の更新でも、またまた松本清張作品を取り上げる。清張以外の小説も読んでるし、小説以外の本も読んでいるのだが、清張作品の場合、作品の背景を調べてみるといろいろ興味深いことを知ることができる機会が多いので、どうしても取り上げる頻度が増え…

松本清張の山岳ミステリー「遭難」と筆を折った山岳作家・加藤薫(追記あり)

このブログはずっと更新してなかったので、広告が表示されていた。年末年始の休みに入ったので久々に更新することにする。 と言っても、4年前からはまっている松本清張のミステリーについて書くのだが、最近、清張の比較的初期の短篇・中篇集である『黒い画…

松本清張『神と野獣の日』は、極右宰相・安倍晋三と北朝鮮のミサイル発射を半世紀前に予言していた!?

今月は松本清張作品を下記の中篇一作しか読んでいない。 神と野獣の日 (角川文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2008/05/24 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログ (5件) を見る 裏表紙に、下記のよう…

松本清張『空(くう)の城』を読み、「社賓とシャヒーンと暴走役員が破綻させた」安宅産業と、「私物化に走った世襲人士」安宅英一・鹿内春雄・安倍晋三に思いを致す

今週の月曜日から火曜日にかけて、来月7日限りでサービスが終了する「はてなカウンター」のアクセス解析で、6年前に書いた下記記事へのアクセスが妙に多いことを知り、なぜだろうと訝っていた。 d.hatena.ne.jp 下記ブログ記事を読んで、その理由がわかった…

松本清張『彩霧』は作者指折りの「駄作」か(笑)

松本清張は多作の人だったし、1950年代末から60年代前半にかけては、同時期にどのくらい多く書けるかの限界に挑んだ人だから、この期間には清張の代表作とされる作品も多く含まれるが、一方で駄作も少なからず産出している。だが、この時期の清張作品は、た…

松本清張『象徴の設計』を読む

山縣有朋(1838-1922)という、私の嫌って止まない長州の軍人・政治家を主人とした松本清張の歴史小説『象徴の設計』(文春文庫新装版,2003)を読んだ。 象徴の設計 (文春文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/08 メディア: 文庫 ク…

沢田真佐子「単独の北岳」を読む(今福龍太編『むかしの山旅』より)

梅雨末期の豪雨はしばしば多数の死者が出る大災害をもたらす。今年も九州北部(福岡、大分)の豪雨で、この記事を書いている時点で18人の死者が出ているが、1953年の梅雨末期の豪雨はとりわけひどかったようだ。 typhoon.yahoo.co.jp 以下引用する。 1953年…

松本清張『風の視線』、『軍師の境遇』、『死の発送』を読む

3か月かけて全9巻の『昭和史発掘』(文春文庫, 新装版2005)を読んだあと、6月は月またぎで読んだ2作品をあわせて6タイトル9冊の清張の小説を読んだ。要するに清張の大半の作品を読もうという野望があるわけで、それももう中盤戦に差しかかってきたので、6作…

東京にも「象潟」があった!〜松本清張『混声の森』より

どういうわけか昨年11月の文化の日の直後からずっと多忙の状態が続いた。だから最近は読書も思うに任せず、しかし2013年秋に『Dの複合』を読んで以来はまってしまった松本清張作品だけは空き時間に読み続けている。 2013年に光文社文庫から刊行が始まった「…

松本清張『昭和史発掘』(5)〜(9)(文春文庫新装版)を読む

松本清張『昭和史発掘』(3)(4)(文春文庫新装版)を読む(『KJ's Books and Music』) - kojitakenの日記(2017年5月6日)の続き。 昭和史発掘 (5) [新装版] (文春文庫) 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/07/08 メディア: 文庫 クリッ…

宇野重規『保守主義とは何か』(中公新書)のメモ

d.hatena.ne.jp 以下、上記ブログ記事から引用。 宇野重規『保守主義とは何か』の見解によれば、近代日本の「保守主義」の本流を巡っては、伊藤博文と大久保利通、大久保の実子である牧野伸顕、戦後においては、牧野の娘婿である吉田茂、さらには宏池会とい…

松本清張『昭和史発掘』(3)(4)(文春文庫新装版)を読む

先月、松本清張の『昭和史発掘』(文春文庫新装版=2005)の第3,4巻を読んだ。 昭和史発掘〈3〉 (文春文庫)[新装版] 作者: 松本清張 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/05 メディア: 文庫 クリック: 4回 この商品を含むブログ (11件) を見る 昭和史発…

松本清張『表象詩人』(光文社文庫)を読む

この記事は、下記記事とほぼ同内容です。新ブログのテストを兼ねた記事です。 松本清張『表象詩人』(光文社文庫)を読む - kojitakenの日記(2017年4月16日) サンデーモーニング(4/16)の冒頭は北朝鮮、次がアメリカのシリア攻撃をめぐって米露は対立して…