KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

2019-01-01から1年間の記事一覧

『エトロフ発緊急電』の著者・佐々木譲氏の一族は択捉島出身だった

「北方領土の日」であったらしい一昨日(2/7)に公開した記事*1に「四国遍路」さんからコメントをいただいた。 kj-books-and-music.hatenablog.com 四国遍路 本書を含むいわゆる「太平洋戦争3部作」を 読んでから佐々木譲さんの著作はほとんど読んでいるもの…

乱歩と清張:江戸川乱歩『D坂の殺人事件』(角川文庫)を読む

最初に、このエントリにはネタバレが含まれていることをお断りしておきます。 前エントリの佐々木譲『エトロフ発緊急電』の前、2月最初に読んだのが江戸川乱歩の『D坂の殺人事件』(角川文庫)。どういうわけか、最近岩波を含めたあちこちの文庫本から乱歩の…

佐々木譲『エトロフ発緊急電』を読む

佐々木譲が1989年に書いた小説『エトロフ発緊急電』(新潮文庫)を読んだ。太平洋戦争の直前、真珠湾攻撃を前にしたアメリカの対日諜報活動に、日系2世のスパイである主人公がかかわるエンターテインメント系冒険・歴史小説。真珠湾攻撃をかけた日本海軍の機…

「下請けいじめ」を描いた松本清張『湖底の光芒』とカルロス・ゴーン

2012年に刊行が始まった光文社文庫の「松本清張プレミアム・ミステリー」のシリーズは、2017年の第4期まではかつて同社の「カッパ・ブックス」から出ていた本を文庫化したものだったが、昨年から来月2月8日発売の『中央流沙』までの第5期8作品は、光文社から…

高橋敏夫『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』に欠落している視点

光文社文庫から出ている「松本清張プレミアム・ミステリー」第5期全8タイトルのうち、今日から読み始めようと思っている『湖底の光芒』を読んだら、あとは2月8日発売予定の『中央流沙』を残すのみになる。これまでの4期21タイトルは全部読んだから、しばらく…

大作曲家アントン・ブルックナーは「計数マニア」だったか - 松本清張『数の風景』より

食わず嫌いを貫いてきた松本清張に突然はまったのは、2013年の晩秋に『Dの複合』を読んだ時だった。これが初めて読んだ清張作品だったが、頁をめくる指が止まらなかった。以後病みつきになり、昨年末までで110タイトルを読んだ。上下本や、文春文庫新装版で…

ユン・チアン『ワイルド・スワン』の下放体験と小松左京「やぶれかぶれ青春記」の学徒動員体験とがそっくりな件

結局このブログを9か月も放置してしまった。ブログの更新を繰り返していくうちに、どんどん細部にこだわって超長文になるうえ、膨大な時間がかかるので、ついつい書き切れずに破綻してしまった恰好だ。 今年1月28日(もう2週間後だ)に「はてなダイアリー」…