1回飛んでしまったスウィングル・シンガーズの記事に今回で区切りをつけたい。
バッハをスキャットで歌って60年前に一世を風靡した当時フランスのグループ、スウィングル・シンガーズのデビューアルバムに、バッハのチェンバロ(ハープシコード)のためのパルティータ第2番の第1曲「シンフォニア」が含まれていた。その曲を歌った映像をクロアチアのテレビ局が放送したようだが、その動画が2010年頃にYouTubeにアップされ、今でも視聴することができる。
モノクロの古い録画であり、音もどうやら最初と最後でピッチが違っているらしいことなど良好とはいえないが。コーラスの妙技はさすがだ。
だが私の目を引いたのはコメント欄だった。以下の2つのツリーに注目した。
まず1つめ。
Really incredible. I found this because I read a Junji Ito story about a cursed record that was inspired by this group. He heard a record in a shop I think and started putting ideas together. Really is a great track though.
"Junji Ito"とは何者か? そしてこのグループにインスパイアされた「呪われたレコード」って何だ? 私にはさっぱりわからなかった。
しかしこのコメントには9件の返信がある。
Came here for the same reason!
他にも同案多数だった。
また、「4年前」にも同じようなコメントツリーがあった。
Is anyone here from Junji Ito's "Used Record"?
こちらでは作品名が「中古レコード」となっている。
I just finished reading it.
as soon as I read which song inspired the manga I came here.
glad I was not the only one
どうやら漫画らしい。
@RawTRimalPolarBear I'm here from Netflix's "Cabinet of Curiosities" episode 4. "The Outside" it's has Swingle Singer music. Cabinet of Curiosities is a seriously creepy television show, it's not for everyone.
どうやらNetflixというインターネットの動画配信サービスで動画を見ることもできるらしい。ネット検索で引っかかったリンクを下記に示す。私自身は見ようとも思わないが。
上記リンクと同じかどうかはわからないが、動画は全世界に向けて配信されているようだ。
【伊藤潤二『マニアック』がNetflixで独占配信中!!】日本が誇るホラー漫画の鬼才・伊藤潤二先生の狂気に満ちた傑作をアニメ化!不気味かつ奇々怪々、独創的な世界観を味わってください…!
— 伊藤潤二『マニアック』公式/Junji Ito Maniac/Netflix全世界配信中!! (@itojunji_anime) 2023年1月19日
Netflix▶https://t.co/hdGXB5lP3k #伊藤潤二マニアック #JunjiItoManiac pic.twitter.com/ZyRBvKBkUG
"Junji Ito" とはホラー漫画家の伊藤潤二氏だった。
コロラトゥーラ・ソプラノの名歌手・田中彩子氏が伊藤氏の大ファンとのことだ。下記のツイートが引っかかった。
I am singing Tomie's theme for episode 9. I’m so honored to work with my favorite artist, Junji Ito, on Tomie's work!
— 田中彩子 Ayako Tanaka (@ayakotanaka223) 2023年1月21日
実は9話の富江のテーマを歌っています。大好きな伊藤潤二さんの富江の作品にご一緒できて光栄です。#伊藤潤二マニアック https://t.co/aEL6OVzzRk
田中さま、富江のテーマの素晴らしい歌声、本当にありがとうございました!
— 伊藤潤二 (@junjiitofficial) 2023年1月21日
伊藤先生、ありがとうございます!光栄です❣️また富江を読み直しております✨
— 田中彩子 Ayako Tanaka (@ayakotanaka223) 2023年1月21日
以下、バッハに関係する部分を引用する。
田中 読んでいると、クラシック音楽がぴったりだと感じて、今日はいろいろなことをお聞きしたいと思っているんです。
伊藤 私はクラシック音楽の表層的なことしか知らないのですが、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキーあたりは仕事をするときに聴いています。特にバッハは仕事の邪魔にならなくて、なかでもチェンバロの音が好きなので、よく聴きながら描いています。
URL: https://ontomo-mag.com/article/interview/resilience06-junji-ito/
バッハの名前が出てくるのはここだけで、スウィングル・シンガーズの話も『呪われたレコード』あるいは『中古レコード』の話も出ていない。
ところで私は全く知らなかったのだが、田中彩子氏は昨年のプロ野球日本シリーズ第1戦の試合前に神宮球場で「君が代」を歌ったとのこと。残念ながら私は君が代が嫌いなのでその場面を見たかもしれないが全然記憶になかった。試合は不気味なほどのスワローズの快勝だったが、それがかえって嫌な予感を覚えさせた。そして第4戦以降でその予感が当たってしまったのだった。
伊藤潤二氏のホラー漫画のタイトルは『中古レコード』だった。その内容を紹介する記事もネットで読める。
作中に出てくる中古レコードのタイトルは「ポーラ・ベルのスキャット」だった。確かにこれならスウィングル・シンガーズとよくマッチする。
しかし、この漫画あるいは動画とスウィングル・シンガーズが歌ったバッハのパルティータ第2番のシンフォニアとを結びつける日本語の記事はまだ発見できていない。YouTubeの動画にも日本から発信された思われるコメントはただの1件もなかった。あるいは日本と海外とで使われた音楽も違っていたのかもしれないと思うが、動画にはアクセスしていないのでわからない。動画の視聴には時間がかかるので、見たい動画でない限りネット記事を書くために見ようとまでは思わないからだ。
でも、興味を持つ方もおられるかもしれないと思ってブログ記事を書いた。それが例によって話があっちに脱線したりこっちに脱線したりしてなかなかまとまらず、伊藤潤二氏と田中彩子氏*1との対談記事も早い段階でアクセスしていたのに、記事を書こうと思い立ってから実際にそれに言及した記事を公開するまで1か月以上かかってしまった。自由に使える時間がひところよりもずいぶん減っているので、時間が経つのが早過ぎて困る。人生の残り時間を意識しなければならない年齢になったことだし、もっとゆとりのある生活を送りたいものだ。