村上春樹の新作小説「騎士団長殺し」(2巻、新潮社)は、神奈川県小田原市を主な舞台に物語が展開する。市近郊の山中にアトリエを構えた日本画家の秘密をめぐる大作で、市内の風物も描かれている。世界各地で愛読される作家だけに、地元の文化人や観光関係者は作品がもたらす効果を期待する。

 小田原駅西口の三省堂書店では、店頭に「小田原のご当地小説」と掲示し、100冊以上の「騎士団長殺し」が山積みだ。2月24日の発売日に約50冊を売り、今月上旬も同店でトップの販売数という。

 小田原に関する歴史や文学の本が豊富な市内の平井書店の平井義人店長(54)は「小田原には歴史や文学が地層のように積み重なってきた。春樹を読むハルキストも街を歩いてほしい」と望む。

 「騎士団長殺し」では、主人公の肖像画家「私」が、洋画家から転じた著名な日本画家・雨田具彦(あまだともひこ)のアトリエのある家に住む。家は小田原厚木道路から山中に入った所にあり、雑木林の先に相模湾を展望できるとされる。小田原市を象徴する梅林の描写もあり、周辺に多くの政治家の別荘もあったと説明。小田原市西部の入生田(いりうだ)に実在した「近衛文麿(このえふみまろ)の別荘」も紹介する。

 その入生田に住んだ画家井上三…

 

朝日新聞デジタルより)