KJ's Books and Music

古寺多見(kojitaken)の本と音楽のブログ

モーツァルト

モーツァルトには革命前夜の時代の空気をかぎとり、オペラで貴族が謝罪・破滅する物語を描いた先進性や、信念のためなら上に歯向かうベートーヴェン並の反骨心があった(高野麻衣氏)

昨年10月末に突然かつてのモーツァルト熱を再燃させて現在に至るが、年度末でもあり、弊ブログのモーツァルト関連記事に一区切りをつけることにした。 私は10〜20代の頃にモーツァルトの音楽にずいぶん嵌ったが、痛恨なことに当時の私は人間に対する関心が薄…

水谷彰良『サリエーリ - モーツァルトに消された宮廷楽長』(音楽之友社, 2004) を読む

明日には図書館に返さなければならないので、水谷彰良著『サリエーリ - モーツァルトに消された宮廷楽長』(音楽之友社, 2004)についてメモを残しておく。下記は2019年の復刊版へのリンク。 www.fukkan.com 本文を始める前に、弊ブログにいただいた下記コメ…

NHKオンデマンドで、宮城聰演出のベルリン国立歌劇場2022年公演 モーツァルトの歌劇「ポントの王ミトリダーテ」(K 87) を視聴した

吉田秀和の昔のNHK-FMの解説で最近聴いたモーツァルト14歳の時のオペラ『ポントの王ミトリダーテ』K87が、音楽だけではなく劇としても面白そうだったので、これは是非動画見たいと思ってネット検索をかけたところ、一昨年(2022年)のベルリン国立歌劇場公演…

息子ヴォルフガングの天才に寄生して宮廷お抱えの楽師一家として余生を送ろうと企んだレオポルト・モーツァルトの野望を見破った女帝マリア・テレジア

先月読んだかげはら史帆さんの『ベートーヴェンの捏造』(河出文庫,2023)の印象はとても強烈で忘れ難い。 www.kawade.co.jp この本については、モーツァルトの没後268回目の命日に公開した下記記事の最後に少しだけ触れた。 kj-books-and-music.hatenablog.…

「弾薬のように短気」だったモーツァルトとその苦難の人生

モーツァルトとベートーヴェンに関して、片割月さんと仰る方から2件のコメントをいただいた。反応が遅れて誠に申し訳ないけれども、以下にご紹介する。コメントを引用しようとして初めて気づいたのだが、下記のブログを運営されている。 nw7hvnc37uel.blog.f…

モーツァルトの268回目の誕生日

今日1月27日はモーツァルトの誕生日。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは今から268年前の1756年1月27日に生まれ、1791年12月5日、35歳10か月でこの世を去った。 私がモーツァルトにはまったのは中学生時代の1975年で、それから来年で半世紀になる。…

どうしようもない陰謀論者だったレオポルト・モーツァルトは息子ヴォルフガングを「神童ショー」に引き回し、息子の擁護者たちを疑い、彼らを不当に貶めて(=恩を仇で返して)息子の天才を実際以上に粉飾していた(呆)

もう1月も下旬に入り、1年で最も寒い季節になってしまったが、やっと2024年初の更新になる。 昨年10月末にかつてのモーツァルティアンの血が騒ぐきっかけがあって、何十年ぶりかでモーツァルトを聴きながら家に持ち帰った仕事を処理するという、学生時代を思…

モーツァルトのピアノ協奏曲第25番第1楽章は全曲が「運命の動機」に支配された、まさにベートーヴェンを呼び込まんばかりの音楽

すっかり暇なし状態が続いてしまった今年の12月だが、家に仕事を持ち込んだ時にも、その仕事をやりながら音楽だけは聴けるので、10月末に買い込んだマレイ・ペライアのモーツァルトピアノ協奏曲全集を2か月かけて聴き終えた。私は渋谷のタワーレコードの店頭…

吉田秀和曰く、モーツァルトが「ヴァイオリン助奏付きのピアノソナタ」をヴァイオリンとピアノの対等な二重奏曲に変えた(1982年放送NHK-FM「名曲のたのしみ」より)【前編】天才の変革には先駆者がいた

モーツァルトについてもう少し書いておきたい。 初めに、前々回に取り上げたK13のいわゆる「フルートソナタ」をオリジナル版で弾いた動画をリンクしたが*1、動画でピアノを弾いていた加藤友来(ゆら)さんという少女が成長してチェンバロ奏者になっているこ…

モーツァルトが母の死の悲しみを込めた(に違いない)ヴァイオリンソナタK304とピアノソナタK310/モーツァルトは母が死んだ当日、父と姉に母の重病を知らせる手紙を書き送った/大江健三郎『万延元年のフットボール』を読んだ

この週末は大江健三郎と吉田秀和を再発見というか、大江に関しては新発見した。このことによって、一昨日と昨日の土日は、いつまで続く(続けられる)かは全くわからない今後の人生において大きな転換点になるかもしれないと思った。 まず大江健三郎について…

モーツァルトの「フルートソナタ ヘ長調 K13」は、超天才作曲家が8歳にして書いた奇跡的な音楽ではあるが、後世の音楽家によって派手に改変されていた

2023年はまだ50日ほど残しているが、CDショップに行く頻度がここ数年ではもっとも多く、といっても2か月に一度くらいのペースだが(近年は年に1度しか行かないか、さもなくば全く行かないかのペースだった)、主にクラシック、一部にジャズのCDを買って聴い…

モーツァルトの命日にレクィエムを聴きつつ、44年前の吉田秀和のラジオ番組を思い出す

何気なくiTunesを開いていたら、2004年12月5日の22時台から23時台にかけてモーツァルトのレクィエム(死者のためのミサ曲)を、アーノンクールの1981年盤で聴いていたタイムスタンプが残っていた。手持ちのCDから読み込んだものだが、iTunesで聴いたのはこの…

村上春樹『騎士団長殺し』は音楽の使い方においても『ねじまき鳥クロニクル』をなぞっていた

初めにおことわりしておきますが、この記事には村上春樹の長篇小説『騎士団長殺し』のネタバレが多数含まれています。この小説を未読で、かつ読みたいと思われる方は、この記事を読まない方が良いと思います。 私は村上春樹の小説の良い読み手では全くないが…

「世界三大悪妻」って? - 小宮正安『コンスタンツェ・モーツァルト』を読む

大作曲家・モーツァルト(1756-1791)の妻・コンスタンツェがいわゆる「悪妻」で、ハイドンともう一人の誰か*1と合わせて「大作曲家三大悪妻」などと言われていることは昔から知っていた。しかし、そのコンスタンツェがどうやら日本でだけ「世界三大悪妻」に…